癒しの風

夕闇が押し迫った頃。
日中に出歩くことを嫌う晴明を連れ、博雅は川岸までやってきた。
ここのところ晴明は屋敷に篭りきりで書物を読みふけっている。
そんな事ばかりしていては身体に毒だと、博雅は無理矢理ここまで晴明を引っ張ってきたのだ。
眼下の川はさらさらと流れ、いかにも涼しげである。
博雅はその音に耳を傾けつつ、晴明の顔を盗み見た。
疲れのためか、顔色はあまりよくない。
しかし、屋敷に篭っていた時よりは、大分表情はやわらかくなっていた。
やはり連れ出して良かったと博雅は内心微笑む。

「博雅、少し座らぬか」

「ああ、そうだな」

二人は近くにあった桜の木の根元に腰を下ろした。
なかなか立派な大木である。
花はとうに散り、今は青々とした葉を風になびかせている。

晴明はそっと瞳を閉じた。
頬を掠めていく風が心地好い。

「博雅、笛を…吹いてくれぬか?」

瞳を閉じたまま、晴明は博雅に言った。

「ああ、良いとも」

博雅は立ち上がり、懐から葉双を取り出した。
紡ぎ出される優しい旋律。
博雅の手に包まれているような不思議な安堵感。
癒される。
疲れが一掃されていく…。
晴明は、自分の心までもが浄化されていくような気がした。
一曲吹き終えた博雅が晴明の横へ戻ってくる。

「お前の笛は心が休まるよ」

晴明が微笑む。

「おれの笛なんぞでお前の気が休まったのなら、良かった」

博雅は、晴明の満開の笑顔にたじろぎながら、照れくさそうにあさっての方を向いた。

「ふふ。博雅はよい漢だ」

赤くなっている博雅の頬にそっとくちづけ、晴明が楽しそうに笑う。

「! 晴明っ!!」

焦って真っ赤になっている博雅を尻目に、晴明はしてやったりと微笑んでいる。

「まったく…」

少し気を落ち着けた博雅が、晴明を背後から包み込む。

「そうやっておれをからかってばかりおると…」

博雅は、回した腕に力を込めた。

「このまま一生放さぬぞ?」

博雅の体温が背中にあたたかい。

「心外だな。おれは、いつも本気だ」

博雅の腕に頬を寄せ、くすくすと笑う。

「そうやって冗談ばかり言う口はこれか?」

博雅が晴明の顎を持ち上げ、唇を塞ぐ。

「ん…」

ただそっと合わせるだけのくちづけ。
それなのに、とても甘い。

「博雅…」

唇が離れていくのが惜しくて、思わず呼び止める。
博雅はやさしく微笑んでもう一度、今度は深いくちづけを晴明に贈った。
優しい風が吹き抜けていく。
二人の逢瀬を祝福するかのように、桜の葉がわさわさと音を立てた。
幸せそうな恋人たちを、
桜の精が優しく見下ろしている…。

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これは、『第一回陰陽師なりきりチャット天下一武道会』にて お世話になった緋色御門さんへの贈り物としてボスが書きたおしたものです。
てか、『書く』と約束して仕上がったのがその翌日なんだから、 この人、つくづく恐ろしいです。
ボスもおだてりゃ木にも上る。
そんな、ボス浅野にインタビューしてみましょう。
木の上からの中継です。

無駄にイチャついてるし、「いいのかな?これで」と思いつつも緋色様に押し付けます(笑)
テンション高めでバカップルというリクエストだったけど…こんなんで満足して頂けたかは謎。
ああ、情けなや。
ホントすいませんって感じです。はい(汗)

みなさんも浅野をどんどんおだてて文章を書かせてやってください。